山口百恵「夢のあとさき」1980/06/22~阿木燿子が語る『山口百恵』

不思議な間柄の二人。阿木さんが追い続けた「百恵の中の、、、」。

◆阿木さんとは意識の底でつながっている

(ラジオ「夢のあとさき」は1980年4月6日から1980年10月5日までニッポン放送他から放送されました。番組開始時すでに、山口百恵さんが三浦友和さんと結婚すること、百恵ちゃんは芸能界を引退することは公表されていました。10/5最終回は「武道館ファイナルコンサート」が行われた日。)

前回、「横須賀ストーリー」を作った宇崎竜童さんの話を紹介しました。今回は阿木燿子さんについてです(放送日が不確かです、すみません)

(ラジオの百恵ちゃんトーク)

先ほどは宇崎さんのお話しをしたんですけれども、ええ今度は、宇崎さんの奥さんですね、阿木燿子さんについてお話ししたいと思うんですけれども。

阿木さんっていうのは、歌の面から言えば、やはり、ええ、あたしの中の新しい個性っていうのかなぁ、そういったものを引き出してくださった方なんですよね。

 
そして、あの、あたしにとって、うーんそうですね、なんていうのか、ちょっと不思議な間柄というか、不思議な感情のやり取りのある女性なんですよね。

 
そうだなぁ、その辺の細かいいきさつっていうのはなかなか難しいんですけれども、意外とこう会わなくても、お互いのすべてがこう見渡せてしまうような部分がとっても多かったりなんかして。

 
であたしにとっては、やはりそういう女性っていうのは、ええ、、初めてだったしね。なんとなくこう不可思議な感じ、なんか、どこかでこの人とあたしは意識の底の方でつながっているんではないだろうかって思ってしまうような、感じの女性だなっていう気がしました。

まあもちろん、あたしと阿木さんっていうのは、レコーディング以外そんなにプライベートな時間で会ってお話ししたりっていうことは、今までありませんでした。まあ今にして思えば、かえってそれがよかったのかな、なんて気もしてるんですけれども。

 
それだけれども、ときどきスタジオなんかでお目にかかる。そうすると、その時の阿木さんの神経っていうのが、手に取るようにわかるんですね。で、阿木さんも同じで、久しぶりに会ったのに、あたしの神経の動きっていうのが、本当に良く見える。

だから、よく音楽祭などで隣り合わせに座ったりすると、まああたしが、こう、すごく緊張してると、それまで落ち着いていた阿木さんも、なんとなくソワソワソワソワし始めて、逆に、阿木さんが緊張してると、それまでは「大丈夫ですよ」(笑)なんて言ってたあたしが、どきどきどきどきしてきてどうしようもなくなったり、まあそんな、連鎖反応をもった関係なんではないかなという、そんな気がしてるんですけれども。

(【ラジオ番組】ニッポン放送「夢のあとさき」/パーソナリティ:山口百恵1980.06.22? 放送より)

・新しい個性を引き出してくださった 

阿木さんの詞を、百恵ちゃんは自分のものとして表現していきました。百恵ちゃんが個性を引き出されたのか、阿木さんが言葉を引き出されたのか。呼吸のように一体化した創作活動という感じです。

本題とはそれますが「引き出してくだった」と言う百恵ちゃん。他の場面では「~くだった」とも言っている。なにか細やかな感情の差異があるようです。「あたし」「わたし」「わたくし」という使い分けもしています。ニュアンスの違いが興味深いですね。

・久しぶりに会ったのに神経の動きが良くわかる 

百恵ちゃんと阿木さん、どこか奥底でつながっている間柄。こういう関係って貴重ですね。作詞家と歌手。生み出していく者と、温め育て表現していく者。この百恵ちゃんの語りで、お二人のあり方がわかった気がします。

というか、阿木さんとの関係をこんな風にとらえていた山口百恵。やっぱり百恵ちゃんファンでいて良かったと思える瞬間。人と人が黙って存在していて、あることを感じとっている【百恵】、、、またそれを感じとっている【筆者私】、という構図。

◆阿木燿子インタビュー「女ではなく無垢な少女。百恵さんを尊敬するばかりです」

続いて阿木燿子さんの音声トークです。

(ラジオの百恵ちゃんトーク)

ええ、阿木さんに、あたしについてちょっとお話しをしていただいたんで、聞いてください。

(阿木さんのトーク音声流れる)

阿木燿子です。
わたしはよく、百恵さんのどういう女の部分を意識して書きますかって、あのインタビューなんかで聞かれるんだけど、あたしはきっと今の今まで百恵ちゃんの中にある「女」っていうより、百恵ちゃんの中にある「無垢な少女」だけを追いかけてきたんじゃないかなっていう気が今してます。

なんか少女は時としてとっても残酷で、それですごーく小悪魔的で、それで気まぐれで、それであの、ひたむきでかわいらしいっていう。なんか大人の分別をつける前の、残酷になりえる少女っていうのをあたしはやっぱり百恵ちゃんに見てきた気がします。

でも残酷なだけ、残酷をいいたいんじゃなくて、やっぱりその人の持っている、生きていることに対するひたむきな情熱みたいなもの、世の中に対して「ノー」っていえるひたむきさみたいなものをやっぱり、大人になったら決して、妥協してしまうようなことでも、「あたしはちがうと思う」って言える、そういう純粋さを、ずっと、やっぱり、書いてきたんだとあたしは思っています。

だから、その意味では、百恵さんは今に至るまで、ホントにそのひたむきさと、純粋さを、あの、この厳しい芸能界の中で、流されやすい世界の中で、守ってきたということはこれはものすごいことで、この百恵さんの意志と、しっかりとした気持ちの強さみたいなものには、ただただ驚く、そして尊敬するばかりなんですけども。

だから、これから逆に守ってきたものをやっぱり解放してもいいんじゃないかなっていう気もして、肩の力ふっと抜いて、楽な生き方も、きっと百恵さん素敵にできる人だと思うし、でも、うーん「横須賀ストーリー」、きっとあたしも一生忘れない曲だと思います。

(【ラジオ番組】ニッポン放送「夢のあとさき」/パーソナリティ:山口百恵1980.06.22? 放送より)

・生きることに対するひたむきな情熱を書いてきた 

またちょっと鳥肌が立つ内容。
ラジオ取材に対する阿木燿子さんのメッセージ。私の先入観ですが「阿木さんらしくフワッとはぐらかすような不思議なムードに包んでお祝いの言葉もまじえてお話しするんじゃないかな」と思っていると、そうじゃないようです。

揺るぎない確信があって、言葉を選びつつしっかりおっしゃる。阿木さんが歌詞をどんな思いで作られてきたのか、山口百恵の何を見つめていたのかすごくわかってくる。

・楽な生き方もきっと素敵にできる人 

「引退後」は肩の力をぬいて!と。この人は本当に百恵ちゃんのことわかってますね。泣けてきちゃう。

◆「歌を自分の言葉として語ってこれた」

続きは、百恵ちゃん。

(ラジオの百恵ちゃんトーク)

うーんなんとなくこう、いつも阿木さんといろんな話ししてて思うんですけれども、とっても、発想っていう意味において、すごく、一瞬にして飛ぶことができるっていうのかな。

言葉がとっても、なんか最近流行りの、ね、「飛んでる」とか「飛んでない」とかいう風に聞こえてしまうとすごくいやなんですけれども、ただあの、やっぱりあたしはいつも思うのは、歌の中でちゃんと阿木さんの言葉が躍ってるっていうことの驚異っていうかな、驚きっていうか、そういうものを感じるんです。息吹きがあるんですよね。

で、やっぱりただ単に言葉を組み合わせただけの詩ではなくって、ほんとうにその中に、阿木燿子さんなのか、または全く違った人格なのかわからないけれども、そういった女性っていうものが、ちゃんと命をもって、そこで悩んだり、迷ったり、怒ったり、よろこんだり、嫉妬したりっていうことを繰り返しているっていう気がするんですよね。
 

だから、あたしもきっと、こんなにも自分の神経っていうものを重ね合わせて、歌を歌ではなく自分の「言葉」として語ってこれたんじゃないかっていう、そんな気がするんです。

で、阿木さんもおっしゃってました「横須賀ストーリー」っていうのはきっと忘れえない、一生忘れられない曲であろうということ。まあ、阿木さんの口からそれをはっきり聞いたのは今日初めてだったんですけれども、すごく感激しました。

まあ、残り、、、っていうかあたしがこの仕事をするのは、すごい、あと4ヶ月ないのかな。短いですけれども。でもそれまでホントに最後の最後まで、阿木さんの世界、阿木さんの描き出す世界っていうもの、自分なりに、自分の身体の中に、重ね合わせて、吸収して、そして自分の言葉として思いっきり、吐き出していきたいなって、またあらためてそんな風に思いました。

それでは、阿木燿子さんの作詞、そして宇崎竜童さんの作曲『横須賀ストーリー』というLPの中から「風たちの午後」聴いてください。

♪曲~「風たちの午後」(歌:山口百恵、作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童、編曲:船山基紀)(ワンコーラス流れる)

(【ラジオ番組】ニッポン放送「夢のあとさき」/パーソナリティ:山口百恵1980.06.22? 放送より)

・ちゃんと命を持ってそこにいる女性 

今回聴きなおして気づいたのは、この百恵!なんかすごい!阿木さんのあとを受けて話しながら対等か上回る力、気?を感じました。私は阿木さんトークで泣けてきちゃって、百恵トークでぞわっと寒気がきた。

阿木燿子「やわらかく強く命を生みだす」。山口百恵「受け止めてパワーにして思い切り吐き出す。生きる」。この関係、古い言い方ですが女役と男役というか、バッテリー(捕手と投手)というか。今まで気づかずにいたお二人の関わり方が見えてきました(今ごろ)。

・(参考)阿木燿子さんの本『プレイバック PARTⅢ 』 

阿木燿子さんが、歌姫「山口百恵」のために書いた79編の詞と、写真やエッセイが入っています。巻末の解説は三浦百惠さん。阿木さんとの出会いや詞の言葉についての思いを綴っています(1985年、引退して5年後のこと)。この本、昔は近所の古本屋で数百円でみかけたこともありますが、今は入手困難なのかネットでは高額になっているよう。安価でめぐりあえたら2冊めもプレゼント用とかに買っておきたいと思います。

◆まとめ

  1. 百恵ちゃんの新しい個性を引き出した作詞家阿木燿子さん
  2. 阿木さんと百恵ちゃんは意識の底でつながっている。久しぶりに会ってもお互いが手に取るように見えた
  3. 百恵の中の「女」?いいえ。「無垢な少女」を追いかけてきました
  4. 生きるひたむきさ、情熱、純粋さ。そして社会に流されずノーと言える強さ
  5. 「百恵ちゃん。これからは素敵に、楽に、生きて」と、阿木さんのメッセージ
  6. 「横須賀ストーリー」は一生忘れられない歌、感激する百恵
  7. 【阿木燿子と山口百恵】~作品に命が吹き込まれている理由はこの超人ふたり

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