山口百恵「あまりりす」

部屋にこもって聴く「あまりりす」 ~冬のアルバム『花ざかり』

「あまりりす」
作詞: 松本隆、作曲:岸田智史、編曲: 船山基紀
アルバム『花ざかり』(B面2曲目)に収録されています

『花ざかり』はシングル曲「秋桜」他、
花をテーマにした曲が多く入っていますが
発売が1977年12月と冬だったこともあり
<冬のアルバム>のイメージがあります

ジャケットには
暖かそうな白いニットのセーターを着た百恵ちゃん

私は石油ストーブをつけて暖を取りながら
毎日このアルバムを聴いていました
(中学1年の頃)

「あまりりす」の歌い始めの詞はこうです

散りゆく花がきれいに咲くのは
精一杯の抵抗なんだね

散りゆく花 —

どんな映像を浮かべますか?

「あまりりす」は
悲しげなギターのイントロに続いて
静かに、うつろに、「散りゆく花が、、、」と
百恵ちゃんが歌いはじめます

すごく美しい歌い出しだと思います

日本に生まれてよかった
THE日本的とでも言えるなにかがこの曲にはあるようで

理由など特にないのに
今日はなにもしたくないなと虚無におそわれる日
部屋でひとり「あまりりす」を口ずさんで
冬の個人的な行事、my 冬ごもりの日にしませんか

それでも生きてゆくという達観

ワンコーラスめに、こんな歌詞があります

私ときたら 愛をなくして
血の気も失せたかなしみの中
それでも生きてゆくのです

悲しみにくれている百恵ちゃんの歌い方からは
「死ぬか生きるかと迷う力もない
きっと生きていくのだろう、世のさだめに従って」
と聞こえます

この歌をつぶやいていると
私も歌の主人公と同化して
生きていく自分に気づくのです

こどもの頃、受け取った呪文

遠い昔の話でございますが

私が保育園に通っていた頃
近所に年上のお姉さんがいました
小学生だったか中学生だったか、、、

ごくたまにタイミングが合うと、
私の姉やおまけ的に私とも遊んでくれました

私はとにかくそのお姉さんが大好きで
もっともっと親しくなって、たくさん遊びたい
心底憧れ、崇拝してしまいそうな予感
なぜそう思ったのかはわかりませんが

幼児期の出会いにはこんな種類のものがあります

ある日の午後
めずらしくお姉さんと私の二人きりでした

地面にローセキでお絵かきをして
お絵かきに飽きると
ブロック塀にもたれてただなんとなく立ってた

その時おもむろにお姉さんが言ったこと

「人って、自分自身のことなら簡単に動かすことはできるけど、
他人のことを動かすのはものすごく難しいことなんだ」と

なにかの引用か、呪文か
前後の話しは聞き漏らしていますが
こんな類いのことを言ったのは確かです

もっとも心のことではなく
モノ(身体?)を動かすことについて
実用的な話をしただけかもしれません

私は心のことと受け止めました

私はウサギがすごく飼いたくて、
めずらしく母に飼ってほしいと強く強く頼みましたが
受け入れてもらえずに終わったということがありました
そのすぐあとだったのかもしれません

(そうなんだ。だったらできるだけ自分は動いてあげよう)
そんな気持ちと
(人はこっちがどんなに熱望しても思い通りになってくれないものなんだ)
という断絶感

ここまで言語化できていませんけど
ひとつの観念に目覚めた状態

その証に、早速そのことを家族にも教えたくて、
しきりにお姉さんに聞いた話を家でしました

「ねえ、お母さん。
自分ってすぐ動かせるよね。
でも人を動かすのは大変なんだよ」

こんな拙い言い方を繰り返して伝えました
家族からの反応は特になく
「??」だったかもしれません

小学校に上がる時我が家は引っ越したので、
お姉さんとは会うことがなくなりました

あの昼下がりのワンシーンと言葉だけ
私の中で通奏低音となって続いていました

人のこころについての美的通奏低音

その7~8年後
「あまりりす」の歌詞にその通奏低音を見つけました
2番の歌詞です

風は花粉を運んでいくのに

人の心は動きもしないの

ずっと私の中で続いていたモチーフが
こんなところにぬっと頭を出した

「人の心は動きもしないの」この語感

よくある描写かもしれないのに
お姉さんの言葉と同化していました
もちろんいい意味で

「あまりりす」は1番を静かに終えて
2番に入るとドラム・ベースが追加されて
主人公の孤独が臨場感を増してきます

その出だし、この歌詞「風は花粉を~」
「風は」の部分を聴いてください

その文字、その発音の背後に
冬が、日本の冬の感じが、怖いぐらい漂っています

それが大好きなんです

まとめ~「あまりりす」の用法

・「あまりりす」は部屋に独りでこもるときの暖かな毛布

・それでも生きていく、と百恵ちゃんの歌で確認して立ち上がろう

・幼少期のおぼろげな記憶は、歌の向こうからあなたをもう一度呼ぶ

・百恵の歌う「風」「KAZE」に、寒い寒い冬のすべてが聞こえて、いい

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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