山口百恵「飛騨の吊り橋」

◆『花ざかり』6曲め、ピアノのイントロがずるい 

「飛騨の吊り橋」
歌:山口百恵
作詞:松本隆
作曲:岸田智史
編曲:川村栄二

アナログレコードでは
これがA面最後の曲です

「悲願花」(A-3)と同じ
川村栄二氏によるアレンジです

聴いてください
ピアノのイントロ

美しいな
ホッとするな

このふたつが同時にきます
ずるいですね

このアルバムの良さは
これだったか、と

変化に富んだ
『花ざかり』の
A面6つの作品が

ここできれいにまとまって
じんわり
胸に迫ってきます

リスナーは
自分なりのイマジネーションで
世界を作っていくのですが

実は
楽しませてもらっている部分が大きい
コース料理をいただくみたいに
出されるものを
耳で受け止め、味わう

次にくる曲
次にくる曲
に、気がつけば魅せられている
「ずるいよシェフ」と言ってしまいます

アルバム作りって
すごくおもしろそう

◆松本隆作品「木綿のハンカチーフ」と「飛騨の吊り橋」

松本隆さんは百恵さんに
11作品もの詞を作っていました

・「愛染橋」
・「赤い絆 (レッド・センセーション)」
そのB面(カップリング曲)の
・「口約束」 …などなど。

「飛騨の吊り橋」(1977.12月発売)
の詩の内容は
よく言われているように

松本隆さんが
1975年に作詞したヒット曲
「木綿のハンカチーフ」
(歌:太田裕美、作詞:松本隆、作曲:筒美京平・1975.12月発売)
似通ったところがあります

————————————–

●ふるさとに恋人を残して
男性が都会(街)へ出て行く

「木綿のハンカチーフ」
⇒男性「街で君への贈り物探すつもり

「飛騨の吊り橋」
⇒男性「迎えに来る」と真面目な顔で約束

●手紙のやりとりをしている

●女性は男性を待ち続けながら
どうしてるかと心配する

●それから結局…?【ネタバレ】

「木綿のハンカチーフ」
⇒「(毎日愉快で)ぼくは帰れない」宣言
⇒「わたし泣きます」宣言(?)

「飛騨の吊り橋」
⇒ 便りが途切れる
⇒「いいの、私は飛騨の里で生きていける

————————————–

それぞれ独立した作品ではあるのですが
聴き比べるとまた
おもしろいです

「木綿のハンカチーフ」は
言葉が多いな~!という印象
二人の手紙のやり取りなので
当然ですけど

「飛騨の吊り橋」は
女性の心情だけ
街にいる男性の言葉は皆無
静かです

松本隆さん
今回は言葉を少なくして
静かに描こうと考えたのかな…

◆吊り橋の音に耳をすましヒロインが出した結論は? 

歌い出しの詞です

吊り橋を誰か渡る 淋しい音が夜をふるわせる

あの人も橋を渡り 街に行って戻らないの

「飛騨の吊り橋」(歌:山口百恵、作詞:松本隆、作曲:岸田智史)

その土地の人はみな
(橋の近くの住人は?)
誰かが渡るときの「橋の音」が
ちゃんと聞こえるものなのでしょうか

特に夜は完全な静寂だから
「あ~あの音は○○んとこのじっさんじゃ」
なんて、
音の主まで
何しに行くかまで
わかっちゃう?

都会育ちの人間には
わからない味わいがあって
すごい詞だなと思う

また
「吊り橋の音」の導入部分から
「まだ戻らないあのひと」
という本題へ入る
表現の巧みさ
短い言葉なのに情景がありありと浮かびます

主人公はずっと、昼も夜も
「吊り橋の音」に耳をすませて
待ち人の帰り待っていたのだろうなと
これだけで
聴き手に伝えてしまうなんてすごい

そして2番の歌詞は

でもいいの 今は私 飛騨の里で生きていゆる

囲炉裏の火にあたり 炎を見つめてた

お婆さんが笑う もうすぐ正月と

顔の皺を深くして 倖せに笑う

「飛騨の吊り橋」(歌:山口百恵、作詞:松本隆、作曲:岸田智史)

「でもいいの」と言うまでの
長い月日がきっとある
それを経て
「ここで生きてゆける」
と結論を出す

女性の潔さ、前向きな思いを
とても感じます
雪のイメージと共に
清澄な空気にあふれています

感激してしまうのは
「お婆さんがしあわせに笑っている」こと
悲しみや苦労もあっただろうけど
今、飛騨の里で笑っている

暦は「もうすぐ正月
やっぱりめでたいんです
(1曲め 「花筆文字」 の雰囲気のように)

娘(主人公)は
悲しみをそっと胸にしまって
おおらかな心持ちで
年明けを待っている

忘れ去られるヒロイン
というと悲壮感があるけれど
この女性はキリッとしていて
あたたかい気持ちになれる

◆山口百恵の歌声の不思議さ 

とても落ち着いた歌い方です

温かみのあるその声は
雪の里に響く
ナレーションのようにも聴こえる

忘れてしまったの?」と
せつなく問いかける主人公も
感情控えめで
どこか文学的な雰囲気

それから、
お婆さんが登場するところ
主人公の祖母なのか
近所のお婆さんなのか
はっきりわかりませんが

歌の中で
お婆さんとやりとりする女性の役
というのは
珍しいですね(この曲だけ?)

「お婆さん」と「娘さん」
この二人の場から発せられる
平和感とか
時の流れ
受け継がれていくもの
大切にすべきものを知る賢さとかを

聴き手は
知らず知らずのうちに
感じとっているように思う

で、これが意外にも
一番「飛騨の吊り橋」を
支えているものかもしれない

山口百恵の歌のなせる技。

◆まとめ 

  1. ピアノの音にほっとするときA面全体がきれいにまとまる。レコードの作りがずるい
  2. 松本隆さんの詞を聴き比べ!「木綿のハンカチーフ」と2年後の「飛騨の吊り橋」
  3. 「ここで生きていける」とつぶやく女性の前向きな姿に倖せの予感
  4. ナレーション、お婆さんと娘…、山口百恵の歌声はその先の大きなところへ私たちを導く。そんな不思議さがある

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