山口百恵「青い羊歯 -アジアンタムー」

◆待ってました!こういう百恵ソング 

「青い羊歯 -アジアンタム-」

歌:山口百恵
作詞:北野弦
作曲:北野弦
編曲:船山基紀

この歌は
アルバム『花ざかり』の
A面5曲めに収録されています
(A面は6曲まであります)

3曲め「悲願花」
 ↓

4曲め「言はぬが花」
 ↓

5曲め「青い羊歯-アジアンタム-」

「言はぬが花」は
暗から一気に明へ
ギャップがすごくて
気分もガラッと変わりました

「青い羊歯-アジアンタム-」は
また暗へ傾きますが
アルバムの核心ともいえる
愁いと悲しみに満ちた
本格派の百恵ソング
やった!待ってました!です

「言はぬが花」は
「青い羊歯-アジアンタム-」を
際立たせるための
序章だったのかと思えてしまうほど
曲順は絶妙に功を奏していて
心にずしりときます

◆「青い羊歯-アジアンタム-」を聴いてみる 

木枯らしが
遠くから吹きつけてくるような
音で始まります

強く刻むリズム
空を仰いで泣くトランペット
そこに十字架の塔が
見えるような気がするのは
私だけでしょうか
(宗教的だけど日本の街のどこか
…といった雰囲気)

渇いた何か
廃墟をさまよい歩く影の抽象画
日常の中の白昼夢?
そんなイメージが渦巻くイントロ

そして
歌いはじめるヴォーカルは
絶望する女性の姿を
渇きの中で
くっきり描き出しています

こういう世界!
いいですね実に

山口百恵の中の女性が
ぬっと出てきたのだと

私たちは
ああそうだったこの女性
ずっと会いたくて待っていた
…と気づく
不思議です

百恵ちゃんの歌い方は
悲しみに震え
情感豊かです

◆歌詞に魅かれて買いました(思い出) 

私がこの曲を聴いたのは
LP『花ざかり』が出たとき
中学1年生の冬。

この歌を聴いてさっそく私は
「鉢植えのアジアンタム」
を買って
自室に置いたのでした

始まりの歌詞は

木洩れ日浴びた 小さな森に似た

はち植の羊歯 窓辺においたら

私の部屋も変りました

「青い羊歯-アジアンタム-」(歌:山口百恵、作詞:北野弦、作曲:北野弦、編曲:船山基紀)

こんな詩を聴いたら
買っちゃいますよね

「小さな森」を部屋に置こう
そして主人公のように
「アンニュイな人」を真似てみたい
…って

アジアンタムは
小さくてやさしい葉が
密にしげっていて
本当に森があるみたい

私は朝に晩に
鉢植えの羊歯を眺めて
歌を口ずさんで
ステキな気分で過ごしました

ところが
ちょっとずつ傷んできてしまったんです
育て方が悪かったのでしょうか

それでどうしたかというと
「お母さんこれどうしよう~」
「あげるからよろしく」
と丸投げ(あまあまな中1の私)

母は丁寧に世話をして
ちゃんと生き返らせてくれました

アジアンタムが傷んでしまったときの
もわっとする葉っぱの匂いを
今でも覚えています

◆期末テストの帰り道(思い出)

もうひとつ妙に覚えているのは

高校のとき
期末テストが昼前で終わって
自転車で帰る途中の風景です
(たまたま一人だった)

平日の12時頃だったかな
いつも学校にいる高校生には
そういう時間帯の
世の中の空気は異質で

ジャメヴ(jamais vu)
未視感が起こっているみたいに
見慣れた場所が
初めて訪れたような感じがする

右手の空き地の奥に
壁一面つたにおおわれている
古びた一軒家を見つけました

曇り空の日だったせいか
あたりは薄暗い幻想に満ちて

すぐに2番の歌詞を思い出しました

つたのからんだ 古いレンガ塀

「青い羊歯-アジアンタム-」(歌:山口百恵、作詞:北野弦、作曲:北野弦、編曲:船山基紀)

まさに「青い羊歯-アジアンタム-」の世界です
私は大好きなこの曲に浸りながら
人気のない道を風に吹かれて進む

これだけのことなんですけど
そんな高校生だったな…と
遠い自分を思い返す一曲でもあります

◆「青い羊歯-アジアンタム-」特に好きな箇所 

2コーラスめから
どんどん加速していく感じが特に好きです
狂気めいたドラマがすごい
ちょっと鳥肌の立つ怖さも感じます

「古いレンガ塀 humm…」とかは


humm…のあとの
ピアノ2音チャンチャン」
が死ぬほど好きです

影でかき鳴らすギターも

忘れきれぬ想いと 厚いコートぬいで

冬の街をひとり 風に向かい走る

「青い羊歯-アジアンタム-」(歌:山口百恵、作詞:北野弦、作曲:北野弦、編曲:船山基紀)

「風に向かい走る」
「風」の「KA」が……
やっぱり死ぬほど好きです

走るって?
すさまじくないですか
私は「全力疾走」をイメージしてしまい
そこにチラリと狂気性が

ものすごい文学作品
聴くたびいつもそう思う
こういうの大好きです

◆作詞・作曲をした北野弦さん 

さて、作詞・作曲の北野弦さん、
百恵ちゃんに提供した作品は…

詩…「青い羊歯-アジアンタム-」これだけ
曲…「青い羊歯-アジアンタム-」と
「時の扉」の2作品だけ

どういう方なのか
私がLPを買った1977年から
インターネットが普及して
2010年くらいまでは「謎の人物」でした
(Wikipediaもなかったです)

2011年2月に出版された本
『プレイバック 制作ディレクター回想記
音楽「山口百恵」全軌跡』(川瀬泰雄著)の中で
ついに答えが明かされました

すでにみなさんご存知のことかもしれませんが
まだ知りたくない
謎のままがステキ
という方はネタバレになりますので
これ以下ご注意ください

著書の「青い羊歯-アジアンタム-」の箇所から
少し引用させていただきます

ここでカミングアウトすると、じつは、この作詞・作曲の北野弦とは僕、筆者自身なのである。

最近、金塚さんと百恵と3人で久しぶりに食事をしたのだが、その際、30数年ぶりに、この曲が自分の作った曲だということを百恵に初めて白状した。

北野弦とは、この30年間、百恵にとっても、勿論アレンジャーの船山氏でさえも知らない謎の作家であった。

(中略)

百恵にカミングアウトしたときも、2曲ともいい曲じゃない、との返事にホッとした。

(『プレイバック 制作ディレクター回想記音楽「山口百恵」全軌跡 』(川瀬泰雄氏 著、学研教育出版、2011/2/25発行 P209、P210より引用)

百恵ちゃんへ提供したのは
2曲だけなのに
どちらも素晴らしい作品
すごいですね

ぜひ本を手にして
さらに詳細を読んでみてください

◆まとめ 

  1. 待ってました!「青い羊歯-アジアンタム-」のような暗く沈んだ歌こそ本格百恵ソング
  2. 山口百恵の中から現れたその女性に、ずっと会いたかったと思い出す私たち
  3. (思い出)小さな森に似た鉢植えの羊歯を私も部屋に置きました
  4. (思い出)期末テストの帰り道で「青い羊歯-アジアンタム-」の世界に迷い込みました
  5. ピアノの「チャンチャン」が大好きです
  6. 「風に向かい走る」の「か」の音が大好きです
  7. 大人の女の全力疾走という狂気が大好きです
  8. 「青い羊歯-アジアンタム-」の作詞・作曲をされた北野弦氏は長らく謎の人物でした(ネタバレあります)

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