山口百恵「悲願花」

◆「悲願花」 

アルバム『花ざかり』
A面3曲めは「悲願花」です

「悲願花」
歌:山口百恵
作詞:谷村新司
作曲:谷村新司
編曲: 川村栄二

川村栄二さんは
山口百恵作品では
これと「飛騨の吊り橋」の2曲
編曲を担当されました

他も数多く手掛けていて
「19:00の街」(野口五郎)
「無言坂」(香西かおり)
などのアレンジもされていました
(Wikipediaより)

谷村新司さん作詞・作曲の
百恵ソングは
「SEINEより愛をこめて」(1977.8.21)
に続き、
発表順ではこれが2曲めです

アルバムのコンセプトに則して
花がタイトルになっています

「悲願花」とは?
別名「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」
ともいう
「彼岸花(ヒガンバナ)」
のことでしょうか

あえて「悲願」という字をあてているのは
きっと意味があるのでしょう
どんな悲しい歌なのか
期待が高まります

◆レトロな純和風の歌にとまどう 

「悲願花」を聴いてみましょう

ぽろぽろと爪弾く
アコースティックギターのソロ
レトロな和風の世界が
いきなり始まります

そこに
慎重にのせていく
ヴォーカルの
透明感ある響き

天窓の彩光へむかって
おごそかに慟哭するよう

アルバム順で聴くと
A-1「花筆文字」
A-2「陽のあたる坂道」ときて…
A-3「悲願花」

予想外の曲順でした
「花筆文字」以上の和風っぽさが
もうくるとは

身のほど知らぬ 恋なれど

神も見捨てし 恋なれど

「悲願花」
(歌:山口百恵、作詞:谷村新司、作曲: 谷村新司、編曲: 川村栄二)

それにしても
ずしっと重めの悲恋の歌を
もうここで入れてくる?
B面(アルバム後半)でもなく?

はやる気持ちのリスナーに
「先を急いじゃいけません」と
言っているかのよう

この張り詰めた空気は?
一体山口百恵は
何をどう歌うのだろう?
と、引き込まれる

「ためいき」
「ヴィオロン」
という歌詞は
フランスのヴェルレーヌ
という詩人の詩を思わせます

◆ギターと歌だけで始まる「起承転結」はどうなる? 

【1番】の歌は
アコースティックギターと歌の
一騎打ち

【2番】は
ヴォーカルの出だしは強め
一歩踏み出すように展開していく

「ヴィオロンの…」
鈴が「チリリン」と聴こえる
かそけき音色

【間奏】でやっと
ストリングスとピアノが
加わり

そのまま【3番】が
美しいピアノと弦楽器に彩られ
情感細やかに歌われます

歌詞からわかるように
主人公は手首を切り
意識が遠のいていくという
劇的な転換を含むシーンです

そして【間奏】で
ギターソロに戻り

【4番】の歌は
心をこめた結びの章
終焉まで緊張感を保ちつつ
そっと閉じる

おしまいはこんな歌詞です

人の命の はかなさは

悲しきゆえに 美しき

「悲願花」
(歌:山口百恵、作詞:谷村新司、作曲: 谷村新司、編曲: 川村栄二)

はかなく、美しい
これはテーマ「花」そのもの

人間の命もまた「花」
時としてみずから散る

決して命を絶つことを称賛しているのではなく
「命のはかなさ」という
普遍的なテーマを
作品の中の表現として追求したとき

神も見捨てた恋に
散ることを選び
悔いはないという女性の姿を
描いたのだと思います

◆死の美学と18歳の山口百恵 

「悲願花」を聴いている時
「アイドル・山口百恵」という概念は
まるっきり消え失せていました

18歳
こんな世界
普通歌えません
すごい

艶(つや)があって
枯れた感じもあって
「恋」の「ko」とか
伸ばした声が消える刹那の情とか

無意味に年齢のことを言うのは
もうよそうと
つくづく思う

「悲願花」(1977.12.5)の
1年以上前に発売された
アリスの「帰らざる日々」
(作詞作曲 谷村新司、1976.4.5)
というシングル曲があります

この2つの歌を聴くと
なんとなく似た世界だなと思うはず
共通しているのは「死」

私の記憶だけで
時期も情報源も不確かですが
ラジオで山口百恵さんが
谷村新司さんについて語っていた中で

「帰らざる日々」や
「悲願花」のような作品

「死の美学」っていうのかな
そういう谷村さんの創りだす世界
すてきだな…と思う

というようなことを
百恵ちゃん言っていました
(うろ覚えです)

◆谷村新司さんと山口百恵さんの出会いは? 

谷村さんと百恵ちゃんが知り合ったのは
百恵ちゃんが17か18歳の頃だったそうです。

CDボックス『百惠伝説Ⅱ』付属
ブックレットの中の
谷村新司さんへのインタビュー記事にありました

――百恵さんと知り合われたきっかけは?

当時、僕はアリスとして活動していて、

たまたま同じ会場でコンサートをすることがあったんです。

昼は百恵さん、夜は我々。(中略)

彼女のコンサートを照明室からそっと見て、

終わってから楽屋を訪ねていったんです。(中略)

すごく魅力的で、電話番号を交換したんです。

CD-BOX『百惠伝説Ⅱ ~STAR LEGEND Ⅱ~ 』(1999.02.27発売)付属ブックレット より引用

この出会いから
谷村さんに曲を依頼して
まず第一弾の
「セーヌより愛をこめて」

誕生した

LP「ゴールデン・フライト」に
収録されている
百恵ちゃん18歳の時の作品です

ブログ内の別記事↓
山口百恵「SEINEより愛をこめて」

にも書きましたが

谷村新司さんに曲を依頼したのは
「百恵のアイデアだった」
ということです

山口百恵が
谷村新司の創る音楽の世界に
魅せられていたのは
間違いないように思います

このお2人の出会いがあって
作品が生まれ
今も聴くことができるのは
とてもしあわせなこと

実は私も
谷村新司さんの歌で
ものすごく好きな歌が
他にも何曲もあります

それらは間違いなく
百恵ちゃんも好きだろうと
確信をもてるほど…
いつか文章で表したいです

◆(感想)「悲願花」を聴いて思うこと 

私個人の感想ですが、

アルバム『花ざかり』3曲目に
「悲願花」が収められているのって
ある意味、すごく残念~!と
今回初めて(2019年4月)
思ってしまいました

12曲入りのレコードを
「さあ聴こう!」とかけた時
曲の連なりの中の1つとして
さっと鑑賞するには

あれ?急になんだろうコレ、ってなる
独特、異質…という感じが否めない

ところが、
全然動じない谷村新司の世界観を
山口百恵が魅せられ唄う美学を
どっぷり味わってみようと
腹をくくって
「悲願花」を聴くと

これこそ山口百恵の歌
これこそ山口百恵の奥にある
ダークな志向性(とでもいおうか)

その重み
高さに
初めて気づける

LPの中では
なかなか気づきにくかった(反省)

この味を知ると
全作品・谷村新司さんによる
山口百恵のアルバムを
せめて1枚作ってほしかったな~と思う

(↓別記事でも似たようなこと言ってます)
山口百恵「一恵」

こういう独特な世界は
聴き手の心構えまで変える
という言い方もできるでしょうか

◆まとめ 

  1. 「悲願」の花で「悲願花」は谷村新司さん作詞作曲。悲しい歌の予感
  2. アコースティックギターが爪弾く「和の世界」にとまどうかもしれません
  3. かなり重い内容を透明感ある声で歌う山口百恵
  4. 「チリリン」と鈴の音が聴こえたか聴こえないかくらいに…
  5. ギター1本から、ストリングス、ピアノが加わり起承転結が進んでいきます
  6. 「命のはかなさ」や「死の美学」をここまで表現できる18歳の山口百恵に瞠目
  7. 「帰らざる日々」(アリス)も合わせて聴いてみてほしい
  8. 百恵ちゃんと谷村さんの出会いは…コンサート後の楽屋で「電話番号の交換」だった
  9. 「悲願花」は心して聴かなくては真価はわからない
  10. 谷村新司独自の世界は揺るがない、リスナーに媚びてこない、歌う山口百恵も然り

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