◆「陽のあたる坂道」おもしろい作家陣
アルバム『花ざかり』
A面2曲めの歌
「陽のあたる坂道」
歌:山口百恵
作詞:松本隆
作曲:佐藤健
編曲:萩田光雄
松本隆さんは詞を【11曲】
佐藤健さんは曲を【3曲】
山口百恵に提供しているようです
(山口百恵『百恵伝説Ⅱ』ブックレットより)
さて…
どの作品でしょう
気になりますが
後回しにして、
1曲目「花筆文字」に続いて
「陽のあたる坂道」を
聴いてみたいと思います
◆ゆらめく陽だまりの中の3人
穏やかで明るいピアノから
始まります
よく聴くと
坂を下っていくような
ピアノ3連符が
ゆらめいている
陽のゆらめきが
ポワポワはじける´うたかた´みたいに
漂っている
そんな坂道にいるみたい
それからコーラスが入ります
どこか昭和っぽく
平和な感じ
陽のあたる坂道で あなたとすれ違いました
女のひとと御一緒なので 声もかけられませんでした
「陽のあたる坂道」
(歌:山口百恵、作詞: 松本隆、作曲: 佐藤健、編曲:萩田光雄)
出だしの歌詞を引用してみました
百恵ちゃん明るいです
実はこの歌かなり「悲しい歌」なのに
明るく歌っていますね
主人公の印象は
控えめで
感性豊かで聡明な女性
「御一緒」という言葉遣いのせいもあるのか
日本の古風な面を
どこかに残している人
和服を着ている姿が浮かびます
あれ
そうなると1つ前の歌「花筆文字」の
「花」と墨で書いていた和の世界
この味わいを引き継ぐかのように
自然な流れがある
そして
室内から光あふれる戸外へ
しっかり場面は切り替わっている
どんどん惹きつけられて
聴いていってしまいます
◆あなたとわたしは「明」と「暗」
「陽のあたる坂道」は
ほんの一場面を描いただけの歌です
主人公の女性が
「あなた」とすれちがった
今まで二人一緒にのぼってた坂道で
「あなた」は幸せそう
状況を察した私は
声をかけることもできず
すごすごと坂をおりる
これだけです
外の様子「明」と
主人公の心の「暗」
このコントラストがすごいです
坂を下っていく主人公の内面に
フォーカスしていくと
ぽかぽか燃える夕刻の陽ざしとは真逆の
寒い寒いかなしみがありました
歌詞に表れている対比を
見てみましょう
「女の人と一緒のあなた」⇔「主人公(私)」
「幸せ」⇔「悲しみ」
「春」⇔「冬」
「暖かい」⇔「寒い」
「燃える夕日」⇔「夜」「青い心」
「坂を上る」⇔「坂を下りる」
「坂の上の教会」⇔「鐘が背中に響く」
この曲が収録されている
『花ざかり』は12月発売。
「冬」らしいアルバムだと思いましたが
「陽のあたる坂道」は
春の暖かい世界に
ぽっかり冬のような寒さが
対比という形で描かれています
その「冬」とは
つつましやかな女性の
「心」でした
聴き手は彼女の心を想像して
「冬」を感じる
詩情とはこういうことでしょうか
◆山口百恵への提供曲『松本隆作詞』『佐藤健作曲』を探してみました
【松本隆さんの作詞した百恵作品…11曲】
1 CHECK OUT LOVE
2 嵐ヶ丘
3 陽のあたる坂道
4 飛騨の吊り橋
5 あまりりす
6 赤い絆 (レッド・センセーション)
7 口約束
8 春爛漫
9 イノセント
10 抱きしめられて
11 愛染橋
【佐藤健さんの作曲した百恵作品…3曲】
1 陽のあたる坂道
2 恋のホットライン
3 E=MC²
◆まとめ
- 悲しい歌を明るく歌う山口百恵
- イントロのピアノがゆらめいて情景が目に浮かびます
- 丁寧な言葉遣いから生まれる端正な佇まい
- 「主人公」と「あなた」がすれ違うだけの詞ですが明暗コントラストがすごい
- 春の歌なのに冬の歌?心の冬を鑑賞しよう
- 珍しいコンビ、詞の松本隆・曲の佐藤健。他にどんな曲を山口百恵に作っているか調べてみました
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