山口百恵「花筆文字」

『花ざかり』を聴く! 

◆花がテーマ~12曲入り冬のコンセプトアルバム 

前作『GOLDEN FLIGHT』
3ケ月と2週間後、
1977年12月5日に発売されたのが
13枚目のアルバム『花ざかり』

夏~残暑~秋と過ぎて
冬に届いたレコードです

【~LPの帯~】には
「花一輪、あなたに届けます」
と書いてあり

真中に大きく毛筆で
「花ざかり 山口百恵」
百恵ちゃんによる文字

さらに感動してしまうのは帯の紙質!
ざらっとした和紙みたいな手触り
横に波打つ凹凸があります

表ジャケットには
白いニットセーターに包まれ
笑顔の花を咲かせている百恵
18歳(19に近い18)

モノトーンでまとめられた
表裏の写真、帯
手に取って眺めているだけで
「冬を過ごすしあわせ」の予感が!


(LP)花ざかり/山口百恵

◆アルバムを時系列で聴くことのたのしみ 

「花筆文字」
シングル「イミテイション・ゴールド」
B面に入っていた曲を
LPに収録したものです

当時花王クリームリンスの
CMに使われていた歌なので
(花王⇒『花』の文字あり)
「あ、あのコマーシャルの歌ね」
とすぐにわかった人も多いでしょう

ところが
アルバム冒頭を飾る1曲として
「花筆文字」を聴いてみると
また趣きが異なってくるんです

琴 の明るい音色が
【和風】の気分
すっと心が落ち着く
※(訂正)琴ではなくハープシコードでした『プレイバック』川瀬泰雄著 より

これからどんな花が、
どんな物語が
展開されるんだろう。
くつろいだ部屋で
じっくり聴く体勢になる

この【和風】への新鮮な感覚は
実は、イギリスへ旅してレコーディングした
前アルバム『GOLDENFLIGHT』の存在が
一役買っているのではないだろうか

アルバムのコンセプトが
前回はこうだったから
今度こうしてみよう!と
しっかり練られている

私たちは、自分のペースで
時系列で1枚1枚アルバムを聴きながら
その都度趣向をこらした作品の世界に
自分自身を映していく

変化するから、飽きない
いつのまにか
オリジナルな自分史が
レコードと共に刻まれていく

山口百恵のレコードは
「人生を伴奏(伴走)してくれる芸術」
にまでなる
これが楽しい

「花筆文字」を聴く 

◆書道 

「花筆文字」
歌:山口百恵
作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
編曲:萩田光雄

ハープシコード(琴じゃなく)の明瞭さ
続いて少し翳り調子のイントロ
フルート、ストリングス
日本的な景色が浮かびます

出だしの詞は

墨をすって一筆に 花と一文字書いたら

強く線をはねながら 揺れる女の黒髪になる

「花筆文字」
(歌:山口百恵、作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲:萩田光雄)

女性が「書」をしたためていました
「花」、と
書道教室?

いや、
ひとり静かに自室で正座して
和紙に向かっているのでしょうか

私も日常の中で書をたしなみ
心をしずめたいです
書道セットを出しておこう

◆部屋の明るさほんのり 

演奏とメロディーそのものから
明るい陰影というものが
感じられました

明るい庭に面した部屋
廊下との区切りに障子がある

午前中、
まだ日差しが回ってこない西側
女性が墨をすっている文机の周囲は
ほんのり翳をまとっている

そんなイメージが

◆明るさと翳り、静と動がしっとりまとまる 

静かに始まって
起承転結の転にあたるのか、
サビでテンポが変わります

そして
女性らしい情感をたたえた
ヴォーカルは
しっとりと明るさに溶け込み
全体を結ぶ

ほんの2分半ほどの歌ですが
なんて美しい音の世界かと

私の連想はこんな風です…

冬、書道
 ⇒元旦
 ⇒初春の清々しさ

静寂と明るさに満ちた
和テイストの世界は
唱歌に親しんできた
山口百恵の真骨頂

後半にかけて
はっとするような感情の崩れが、、、
見えたと思えば消える

全体が端正であるのに
ゆらめきの中
澱と傷がわずかにあるのです

もしこんな茶碗があったら
名品なんだろうなと思う
すばらしい歌唱

 ⇒いい正月にいい心持ち
 ⇒【 福 】だぁ

(結論)
「花筆文字」は【福】を感じる歌

アルバムにはあと11曲も
百恵ちゃんの歌が入っている。
このワクワクも福の元です

やはりアルバムの1曲目は
「期待感」マックスにしてくれる
歌がいいんですね

◆「うたかためく」とは… 

1番サビとリフレイン部分に
こんな詞がありました

恋は命 うたかためく 私の命

静めても 静めても 心に溢れる命

「花筆文字」
(歌:山口百恵、作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲:萩田光雄)

「うたかためく」とは?
ある時ふと気にかかってしまった

阿木燿子さんの創る言葉はすごい
それは十分わかっておりますが
私の中では「うたかためく」が
代表格になっています

「うたかためく」の意味は
ニュアンスでわかる気がします
別の言葉で言い換えない方が
いいのかもしれません

「方丈記」の有名な冒頭を思い出しました

ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、

久しくとどまりたるためしなし。

「方丈記」鴨長明(1212年、随筆)

「うたかた」とは
泡沫、水に浮かぶ泡(あわ)

生まれては消え
消えては生まれる

この世の無常や
はかなさを
表すときに使ったりします

「花筆文字」の詞では
「恋」は…
「うたかた」+「めく」+「命」
だと

語感はもちろん
意味内容が
美的ではありませんか

◆まとめ 

  1. 冬のアルバム『花ざかり』~「花一輪、あなたに届けます」
  2. ジャケット写真は白いセーターに包まれた百恵ちゃんの笑顔
  3. 1枚1枚工夫を凝らしたコンセプトアルバムに、リスナーの自分史が刻まれていく
  4. 「花筆文字」は和紙に向って書をしたためる歌?心が落ち着きます
  5. 日本的な明るさと翳りの調和。メロディーと演奏が素晴らしいと思う
  6. 初春に山口百恵の歌唱はまるで名作茶器。「福」がやってくる
  7. 『花ざかり』1曲目を飾る「花筆文字」は期待感いっぱいの歌
  8. 阿木燿子さんの詞がすごい!「うたかためく私の命」

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