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『百恵白書』B-3「やったー!カッコいい!」歌と演奏のおもちゃ箱
「ボーイッシュ・ベイビー」
歌:山口百恵
作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
編曲:船山基紀
アルバム『百恵白書』
(1977年5月発売)の
B面3曲目に収録されています
◆「急にショートにしたくて髪をバッサリ」百恵流
LPと同時期に発売された
楽譜&写真本『百恵白書』の
この歌へのコメントを見てみましょう
去年あたりから何となく髪を伸ばしていたのだけれど、何故だか急にショートカットにしたい、そんな気になりまして、バッサリ切っちゃいました。切ってからしばらく皆から幼くなったネ。なんて言われていたのです。
今は、あまりそうは言われないのですが……自分では精一杯気取ってるつもりなのに、子供扱いされてくやしかった。ホント―――
「MOMOE STATEMENT 百恵白書(限定愛蔵版)」(1977年7月1日東京音楽出版株式会社より発行)
「バッサリ」切っちゃったのは
いつ頃なんでしょう
髪を切った
↓
「ボーイッシュ・ベイビー」の
曲想が練られた、の順でしょう
シングル盤のジャケットは?
・「横須賀ストーリー」(1976年6月)
・「パールカラーにゆれて」(1976年9月)
・「赤い衝撃」(1976年11月)
・「初恋草紙」(1977年1月)
・「夢先案内人」(1977年4月)
どれも髪は長めの百恵ちゃんです
『百恵白書』発売1977年5月より
2ヶ月もあとの写真ですから
違うでしょうけど↓
・「イミテイション・ゴールド」(1977年7月)
…は短い!
これかな…?と思うのは
・テレビドラマ『赤い衝撃』
第18話「結婚するなら母は死にます」
1977年3月11日放送です
この回は
高校の卒業式のシーン他
車の運転を習ったり
沖縄へ行ったりしますが
ショートヘアです!
もっと詳しく言うと
「ショートだ!」
「あれ?微妙にセミロング?」
が錯綜しています
撮影進行中に
髪を切ったのだろうと想像できます
(当時は結構ありました)
ドラマ『赤い衝撃』の相手役は
三浦友和さん
「髪を切ったら
ボーイッシュ・ベイビー
あなたはからかうの」
という阿木さんの詞には、、、
その向こうに
友和さんのイメージが見えてきます
(創作とはいえ)
※当時の私、、、「あなた」は
謎のままのあなたでした
これも貴重です
◆軽快なロック調「boyish baby!」が驚くほどうまいと思う
「ボーイッシュ・ベイビー」
曲はどんな印象でしょうか
当時12歳の私は
「うわ~これカッコいい!!」
ってかなり衝撃的で
何度も繰り返し聴いて
自分もレコードに合わせて歌っていました
同じ「カッコいい」でも
「I Came From 横須賀」は
それ以前からの百恵歌謡のカッコよさ
「ボーイッシュ・ベイビー」
は今まで知らなかったジャンル
こういう曲調って好きだな
新鮮!いい!いい!
…そんな感じで聴いたんですよね
髪を切ったら
ボーイッシュ・ベイビー
あなたはそう呼ぶの
人によったら大人びてると
言われることもあるのに「ボーイッシュ・ベイビー」
(歌:山口百恵、作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 船山基紀)
百恵ちゃんの歌う
♩Boyish baby
リズム、パンチ、発音、、、
この完成度はなんだろう
リスナーはただ「!」と
驚くだけ
百恵ちゃんに対する期待感を
越えるものが
ひゅっと出てきた
その瞬間と言えるかもしれない
◆多彩なアレンジと百恵唱法「だって私は恋してる」
♩だって私は恋してる
という歌詞が
最後に出てきますが
これがすべて!という感じの
ウキウキな恋歌なんですね
だから百恵ちゃんは全体的に
やわらかく
とても女性的に表現しています
ピアノのファンキーな弾き殴り
インパクトの強いドラム、シンバル
♩ハイハイハイハイ
ハイハイハイハイ
のところは弦楽器が
「トゥルルットッ
トゥルルットゥ」と
コーラスと共に入って
コミカルに
冷やかすように
盛り上げていきます
ヴォーカルは
「あるのに~」
「私かも~」他
語尾にこぶしをつけて
演奏とコラボする
百恵ちゃんはこういう節回しを
普段は多用してないから
この曲で来た!と
楽しんで聴けると思います
あっという間に走り過ぎていく
3分7秒ほどの曲の中に
耳に残るいくつかの唱法が
リズミカルに
カラフルに
ちりばめられた歌
どうしたらこんな風に歌えるの?
と仰ぎ見るような気持ちで
聴いてしまいます
◆ダブル・トラックという手法で水彩画のように魅せる
不思議なずれ
ヴォーカルが2つに分かれて
聴こえてくる箇所があります
「♩あなたにならば
やさしく出来る」
微妙にずれて
百恵の声のあとにもう一人百恵の声が
聞こえています
「やさししくくでききる~」
重ね録りの手法らしく
2つの声のずれ方は
ファジーで(曖昧で)
なぜか心地よさを覚える
リスナーは「ずれた百恵ヴォイス」ごと
記憶してしまい、何十年、、、
それを頭の中で再生しているのです
かなり特徴的な部分
『プレイバック 制作ディレクター回想記音楽「山口百恵」全軌跡 』(川瀬泰雄氏 著)の「ボーイッシュ・ベイビー」のところを見ると以下のように書いてありました
軽快なリズムが心地よい。
百恵の歌は、ダブル・トラックでミックスしてあるため、バックのサウンドに馴染んで、アメリカのオールディーズ・ポップスのようなサウンドに聴こえる。
エンディングでは、当時、ジェットマシンといわれた、シュワーッと聴こえるサウンドを苦労して作り上げた記憶がある。
(『プレイバック 制作ディレクター回想記音楽「山口百恵」全軌跡 』(川瀬泰雄氏 著)P178より引用)
「シュワ―ッ」というサウンドは
女性コーラスのところでしょうか
確かに入ってます
フェイドアウトしていって
宇宙まで行くか?
そんな雰囲気
「苦労して作り上げた」
こうしたお話を聞かせていただけると
また新たに山口百恵アルバムを
じっくり聴く楽しみが増えるというものです
◆まとめ
- 本『百恵白書』には「ショートカットにしたら幼くなったねと言われた。くやしい~」とコメント
- 髪をバッサリ切ったのはドラマ『赤い衝撃』18話撮影の頃では?ショートとミディアム、髪型が混在する18話を見てみよう
- 百恵ちゃんの歌う「♩Boyish baby」は予想を超えたカッコよさ
- 軽快なロックンロールの演奏やコーラスは楽しいおもちゃ箱
- 百恵ヴォーカルにしては珍しい節回し。演奏隊との一体感
- 自然体でやさしくて冗談多め…「私は恋してる」。是非聴いてみてください
- 声が二重になってる箇所のファジーな淡さ。ダブル・トラックで凝った音作り
- サウンド作りに苦労した思い出。制作者の話はアルバムを2度楽しませてくれる
- (感想)髪をバッサリ切りたくなりました
~こんな記事も~
◆『赤い衝撃』最終回の放送は、『百恵白書』発売の8日後でした
オープニングテーマ曲についての記事ですが、ドラマのことも。

◆「横須賀ストーリー」を作ったときの宇崎竜童氏、百恵ちゃんを「歌うコンピューター」と呼ぶ話。
