山口百恵「いた・せくすありす」

アルバム『百恵白書』を聴こう(その3)

「いた・せくすありす」
歌:山口百恵
作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
編曲:船山基紀

アルバム『百恵白書』
(1977年5月発売)の
A面3曲目に収録されています

◆どういう意味?ひらがなで謎のタイトル

・森鴎外の小説 

「いた・せくすありす」
阿木さんのつけた謎めいたタイトル
ひらがなは、やわらかい感じがします

森鴎外の小説に
『ヰタ・セクスアリス』というのがあり
それをヒントにしているようです

『ヰタ・セクスアリス』(ウィタ・セクスアリス[1])は森鴎外の小説である。1909年(明治42年)に発表された。題名はラテン語で性欲的生活を意味するvita sexualisから。

文芸誌「スバル」7号に掲載された当初は政府から卑猥な小説だと考えられ発禁処分を受けてしまうが[2][3]、実際には性行為が直接描写されていることは無く、主人公の哲学者・金井湛(かねい・しずか)が、自らの性的体験について哲学的視点から考える内容となっている。

『ヰタ・セクスアリス』Wikipediaより

・「ヰ」の字とは? 

一瞬「タ・セクスアリス」と読みそうになるが
「キターーー!」じゃない

ラテン語の「vita」をカナ表記で「ヰタ」
ひらがなでは「いた」

「ヰ」は、わ行「わゐうゑを」のゐ(wi)
発音は「イ」でいいみたいです

「性欲的生活」という和訳

◆年齢を追って歌う「いた・せくすありす」

・年齢かぞえ歌 

私は『ヰタ・セクスアリス』を読んだことがなかったので、今回3分の1ほど読んでみました。哲学を教えている主人公・金井が自分の過去を振り返って、性的なことに目覚めていく出来事を年齢を追いながら綴っているようです

六つのときであった。、、、

七つになった。、、、

十になった。、、、と話は進んでいきます

阿木燿子さんの「いた・せくすありす」は
鴎外とは違って
年齢をうしろの方に置く

12歳から18歳まで
成長していく恥ずかしさ
異性を意識する気持ちなどを
とても繊細に描いています

1コーラス目 、、、12の年

2コーラス目 、、、14の頃

3コーラス目 、、、16の時

4コーラス目 、、、18の今

(ラスト)、、、18の今

最後の「18の今」は高い音
ファルセットで伸びて終わる

2年ずつ年を刻んで
きっちり4コーラス
とても整った形式です

・語尾を変えてくる

年齢を言うところ
阿木さんの詞は
「年」「頃」「時」「今」と
全部変えてくる

他の作詞家の詞でもありますが
阿木さんのは
語尾だけ変えたり
言葉を細かく選んでいたり

機械的な繰り返しを避けている
感じがします

例えば、、、

「しなやかに歌って」
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」
「イントロダクション・春」
「水曜日のクオレ」
「不死鳥伝説」、、、

私の印象で曲を挙げてみました

詩を細やかに覚えてないと
間違えてしまうので
要注意です

◆イントロ!~甘美なピアノに酔いしれる

・アレンジに感動

イントロのピアノソロを聴いてください

繊細な旋律が
ストーリー全体を表している
と言ってもいいほどの素晴らしさ

無邪気な子供時代に
サヨナラする
兆し

成長するときの
決して明るくはない
重苦しい愁いが

一瞬で胸に満ちてきます

船山基紀さんのアレンジ
音楽的なことを超えて
作品の深い理解なのだと思えて
聴くたびに感動!

◆『百恵白書』の完璧な曲構成

・アルバム『百恵白書』

順番に聴いていくと
こういう曲順です

1.「I Came From 横須賀」

2.「鏡の中のある日」

3.「いた・せくすありす」

この流れ!
すごくいい

「いた・せくすありす」の
冒頭、ピアノソロが
完璧に効いてる!

この並びで聴いているからこそ
心に染み入ってくる

アルバムの構成の効果で
一層感動的になる箇所って
他にもあるのでしょうね

私の場合
ここ「3曲目」は特にそうです

ぜひ順番に聴いてみてください

◆歌の情景を思い浮かべる

1番の歌詞は

木々が緑を芽吹くように
胸のふくらみ気づいたのは
十二の年

レモンの色のセーター着た
わたしのことをはやし立てる
腕白坊主

ノートを抱いて駆けたけど
燃えたつように
恥ずかしかったわ

「いた・せくすありす」より
(歌:山口百恵、作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童、編曲:船山基紀)

・芽吹いてゆく緑 

私はなんとなく
小雨が降った後のような
イメージがあります

鮮やかな新芽

・レモン色 

阿木さんが描く
みずみずしい色彩

1970年初め
百恵ちゃん12歳頃に
「レモン色」って
おしゃれですね

芽吹く緑と
走り去るレモン色

ピアノの音に続いて
美しい詩が
映像を浮かび上がらせ
切なすぎる世界を展開させていく

・百恵ちゃんの歌唱 

百恵ちゃんは
18才の「今」にしっかり足をつけて
丁寧に自分を振り返っている

愁いあるメロディーに
シンプルに
聴き取りやすい言葉を乗せて

じっくり聴くと
とても心をこめているのが伝わってきます

自分をいつくしむように
全ての少女の
成長や恥じらいをいつくしむように

そして少し鼻声っぽい(?)
百恵ちゃんは風邪気味だったのか
わかりませんが

ちょっとけだるくて、重っ苦しい
風邪を引いているときのあの感じ
想像して聴きます

思春期というのも
そんなけだるい気分のなかで
もがいているような時期だったりするな
なんて思いながら

◆まとめ

  1. タイトルは森鴎外の小説からきているが、全然別物の芸術作品!
  2. 12歳から18歳まで、少女の年齢かぞえ歌
  3. イントロの甘美なピアノ!その深さに感動する
  4. アルバムの曲構成が素晴らしい~1曲めから順に聴くとさらにいい
  5. 映像に浮かび上がるみずみずしい色彩に阿木燿子さんの美意識がある
  6. 山口百恵が心を込めて歌うせつない思春期~すべての少女へ愛をこめて
  7. ライブ『 MOMOE IN KOMA 』(1977)でも歌っています

『第3回百恵ちゃんまつり (1977年) MOMOE IN KOMA』レコチョク

こんな記事も

・ピアノの美しさといえば矢野立美さんアレンジのこちらも

⇒ 山口百恵「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

・百恵ちゃん中学の文化祭のとき。憧れの先輩が、、、?

⇒ 山口百恵「夢のあとさき」1980/04/20② 中学の先輩にショック

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