山口百恵「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

音楽のリレーが創り出すもの

「オレンジ・ブロッサム・ブルース」
歌:山口百恵
作詞: 阿木燿子
作曲: 宇崎竜童
編曲: 矢野立美

アルバム『パールカラーにゆれて』
(1976年12月発売)の
B面5曲目に収録されています

◆間~次の曲を待つことの意味 

このアルバムを
順番に聴いてきたらこうですね

B-4「涼やかなひと」



B-5「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

「涼やかなひと」
ちょっとした
リフレッシュ効果があって
軽くひと呼吸できました

耳にその名残りを感じつつ
「間」
アナログレコードなら
微かな針の音がしているところ

「間」に何を思うでしょうか?

「さあ次」と心を静めて
歌詞カードを見ると
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

この魅力的なタイトル
初めての人は
どんな歌だろう?と
想像をめぐらせる

また前曲からの流れで
今度は
しっかり聴き込むタイプの曲
じゃなかろうか、、、
と予感がする

◆鑑賞者の法則~曲が移る刹那にしかわからないこと 

つまり
「涼やかなひと」から
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」へ

1曲だけ聴いたのでは
決して生まれない

あるいは
A面1曲目から
じっくり聴いたときしか
わからない

「感じ」があるんです

「鑑賞者」を務めてきた
少しの疲労感と

リフレッシュ後に
そろそろ終盤だ
と思ったとき

ふと
翳っていく
B-4からB-5への
変調の美しさ!

曲から曲へのバトンリレー
曲調が変化するその数秒間に
私たちが感じるもの

簡単には言えませんが

深遠な情緒を呼び覚ます
音楽の不思議な力が
ちらっとくるんですね

山口百恵のアルバム
に限ったことではありません

多くの他アーティストの
アルバムにも
こういうことがあるでしょう

傑作!「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

◆百恵ヴォーカルと演奏の関係 

アルバム『パールカラーにゆれて』の
今まで記事で書いた
10曲の中で

私が独自に感じた
「ヴォーカルと演奏の関係」
がありました

この2つでした

・A-5「雨に願いを」
落ち着いた歌唱の支配下で
打楽器が素直にコロコロと
従っているようだ

A-6「モノトーンの肖像画」
孤独なモノローグ=「歌手」
その芸術性に引き寄せられて
伴奏を買って出た
演奏家(アーティスト)たち

・このB-5
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

における関係はどうかというと

ヴォーカルもミュージシャンも
その全パートが

ぴったり呼吸のあった
アンサンブルを奏でている!

「次はこの楽器
ヴォーカル消えていく
今度はい、これっ!」って

聴いている私は
リングで戦うボクサーを
見るように

一緒になって
体勢をとっています

緊張の糸をはりつめさせて
最高の力をだした
芸術の集大成と言うべきもの

そんな風に聴きました

特に演奏メインで
しっかり聴きなおした今日
新たに感動
(41年以上経過)

ありえる?

今まで細かな聴き方を
してなかったのかもしれません

意外とそうですね(反省)

◆宇崎竜童さまの曲だ、 

アルバム『パールカラーにゆれて』
12曲中

2曲だけが
この3人による作品です↓

————————————

A-6「モノトーンの肖像画」と
B-5「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

作詞: 阿木燿子
作曲: 宇崎竜童
編曲:矢野立美
————————————

B-5!終盤に
こんないい曲があった

全体を形作っていくとき
AB面のバランスもとれて
とても落ち着く
最高の配置だと思います

この歌詞

あなた ほんのしばらく汽車でゆき
すぐに戻ってくるはずと思い込み

woo woo
Orange Blossom Blues

あなた実のなる花の好きな人
オレンジの季節まで

「オレンジ・ブロッサム・ブルース」
(歌:山口百恵 作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 矢野立美)

♪「あなたほんのしばらく」
の「あなた」

この3音が
キーになっているのでは?と
ある時気づきました

この歌に惹きつけられる
心地よいムード

思えば私は12才の時から
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」は
いい!と知っていたし

友人と共通の「一番好きな歌」で
不動でしたが


「あなた」
の3音
そこからやってくる
愁いの色彩が独特だったと
当時は気づいてもいなかった

それから
♪「すぐに戻って」の「すぐに」
♪「オレンジのー」の「のー」

こういうメロディー
なんと呼ぶのか

異国情緒、演歌の調べ
エスニック、民謡、、、

どれも当てはまらないような
もっと洗練されていて
美というより哀感
おしゃれだけど薄暗い気配が

、、、言い表すのは難しくて

宇崎竜童氏の曲なんだなと
思うんです

素晴らしい曲をありがとうございます
そんな気持ちで

演奏がすごいことになっていた

◆洗濯板みたいな楽器「ギロ」 

先に私は
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」
のことをこう記しました

——————————–

「その全パートが
ぴったり呼吸のあった
アンサンブルを奏でている」と

——————————-

と、ところが
「?」というものが紛れ込んでいた

♪「あなたほんのしばらく~」から
「思い込み」前まで

「ギロ」という楽器でしょうか?

ジュワッ、ジュワッ

と洗濯板を木の棒で擦るような音が
控えめに
5回ほど入ります

が、
テンポが不思議~~!

アバウトというか
ここは俺が適当にやるからって
約束なのか

リズムの法則が私にはわかりません

しかし、言えるのは
「だからいい!これがいい!」

なんという手作り感!

自在に「退化」を選ぶことこそ
もっとも賢い文明である
(~私の持論~)

※退化というのは
コンピュータ技術で
寸秒たがわず刻むのじゃあない
という意味

※それともギロが超正確な
テンポで私がわからないだけか?

◆微妙に違う3つの演奏 

阿木燿子さんの詞

・冬から春まで~
・ずいぶん前から~
・夜から朝まで~

と場面を変えて
3番まであるんですが

【2番】
♪「ずいぶん前ら知ってます」

この百恵ヴォーカル
」の歌い方もいいし

なんといっても
静けさにふっと戻る感じがいい


【1番】
のサビまで
強弱をしっかりつけていて

「季節まで~」のところで
急に少し静まる
それを受けて2番へ

これが絶妙で好きなんです

ところが【3番】は違う!
♪「夜から朝まで~」
ストリングス(ヴァイオリン?)が
もう入っている!
【2番】と表情を変えているんですね

こうした細かな違い、意味
素適ですね

◆八面六臂!ピアノの秘めやかな美 

♪「季節まで~」
♪「季節には~」

そして3番ラストの
♪「季節なら~」

この伸ばす所
百恵ヴォーカルが波打つようにふるえて
長めに伸ばしているのが
ブルースを感じます

そして
「ピアノ」の演奏!
目立ちませんが
ピアノの音色だけに注力して
聴いてみてください

全編をとおして
神出鬼没に心をとらえてくる

こんなにも美しかったとは!

そして
ピアノこそが影ながら
ブルースやってた!
という感じに驚かされます

2番の♪「woowoowoo」の所や
3番前の間奏など

ジャズバーのピアニストを
一瞬垣間見たような
jazzyでbluesyなテイスト

◆あの頃の「オレンジ・ブロッサム・ブルース」 

個人的な話になります

1976年の冬は

繰り返し記していますが
私が山口百恵のアルバムと
出会った年です

そんな意味で、
『パールカラーにゆれて』の中の
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」は

あの頃の記念碑的な歌になってました
ずいぶん長い年月ですねぇ

今あえて正直に言うと
あの、小学校6年の冬

私の中には
常に「不幸」な感じがありました

小学校という集団生活
そのものすごく苦痛な面
(いやほとんど苦痛ばかりだった)

両親の離婚
働く母親
鍵っ子だった私

それから
百恵ちゃんの歌を
一緒に聴くことができた
ただ1人の友だち

彼女とは
中学が別々になると知って

楽しい時は続かないという失望
どうせ私はそうなんだ、、、
という寂しさ

これら全部ひっくるめた
苦痛の気分の中で
小学校生活は終わろうとしていました

で、あの時期の記念すべき歌に
やはり一番ふさわしいのが
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」
なんですね

41年経った今回
聴きなおしてみて

一番新鮮な発見が
「ピアノ」の美しさだったのですが

その発見は個人的に大きなことでした

当時知らずに聴いていた
「オレンジ・ブロッサム・ブルース」

その中で奏でていてくれた
ピアノ、そのメロディ
こんなに美しかったのか!と知ったとき

な~んだ私は
この音色に実はそっと見守られて
当時過ごしていたんだと

もっと言えば
私の世界を演奏で
包んでくれていたのだ
と思える

思い出はみな美しくみえる
と言ったらそれまでですが

あんなに不安定で
あんなに微力で
不幸の味がしていた
12~13才の私

この曲
百恵ちゃんの歌声
そしてピアノ

当時の私に流れていたのが
こういうものだったこと

それだけで
良かったなと思えてきました

本当にそう思ったので

「曲の力」というものの1つとして
書いておくことにしました

「オレンジ・ブロッサム・ブルース」まとめ

◆まとめ 

  1. アルバムリスナーの法則~曲の「間」こそ鑑賞しよう
  2. 「オレンジ・ブロッサム・ブルース」はアンサンブル(調和)の傑作
  3. ギロの、型にはまらないリズムを聴こう
  4. 3番まであっても3回同じ演奏繰り返してないよ
  5. 全体を仕上げているピアノの美学
  6. 思い出をあとから浄化し救ってしまう音楽はある!

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