山口百恵「雨に願いを」

「雨に願いを」~『パールカラーにゆれて』A-5


山口百恵「雨に願いを」

作詞: 千家和也、作曲: 佐瀬寿一、編曲: 船山基紀

アルバム『パールカラーにゆれて』(1976年12月発売)のA面5曲目

またシングル「パールカラーにゆれて」のB面曲でもあります。

LPは全12曲入りで、A面・B面6曲ずつ
「雨に願いを」はA面(つまり前半)の
最後から2番目の曲なんです

パラレルワールドに降る雨

1、2、3、4、そして今「5曲目」。

変化に富んでいます。

4曲目「君に涙のくちづけを」

ちょっと鼻の奥がツンとするような
せつないメロディーで

百恵ちゃんが子供の頃
「唱歌」に親しんでいたことを
思い出させてくれる素適な曲でした

その次の曲が
もしまた定番の青春哀歌っぽいものだったら

特徴が際立ちにくく飽きてしまったかもしれませんが

ちゃんとそうならないよう構成されていました。

「雨」です

あ、雨が降ってきた
と空を見上げた瞬間
私たちは雨を欲していたのだと気づく

1枚のLPを順序よく聴くという旅

   の小道も半ばにさしかかるという時に

「雨、雨、雨」

緑が鮮やかに光り
ザーっという音に包まれている

そんな明るい昼の森が
聴き手を心地よく包みます

といっても歌の内容とは別です

「歌」の世界は夕暮時の雨の中
立ち尽くす女性の心の叫び!

「聴く」という旅の道中の景色が
パラレルワールド になって表れてくる

そんな感じ

一方で森の風景が移ろっていくのを感じつつ
現実でのレコードを聴く楽しさ

俳句の趣き~広がるレコードの世界

余談ですが、
こんな俳句があったのを思い出しました。

夏休みも半ばの雨となりにけり

安住敦(1907年7月1日~1988年7月8日)俳人、随筆家

~私の鑑賞~

子供の夏休みは
ドタバタと遊び倒して日々が過ぎ
親に「宿題しろ!」と言われては逃げ、、、

そんな元気一杯で騒々しいイメージですが

ある日
思い出したかのように降る雨

窓から空模様を眺める子供は
いつになく無口

少しの倦怠感と長い長い静寂が
不思議と神聖な精神を満たしてゆく

、、、そんなひとときを切り取った句
と私は勝手に受け取ってすごく好きな句です。

この「雨に願いを」という歌も
「なかばの雨」です

いろいろ連想が働き
聴き手の異次元世界にも趣きがでてきました。

曲を印象づけるテクニックは?

「雨に願いを」はアップテンポな曲です。

シングル盤のAB(カップリング)の関係の
「パールカラーにゆれて」と両方聴くと

どちらもアップテンポで
歌詞に繰り返しが多用されてる点など
似ています。

でも、どうでしょう

区別ははっきりつくんですよね。

理屈抜きでパッとわかるのは
やはり「雨に願いを」の「雨」です。

違う天気にする!

これって曲の印象を変えたいときの
効果的で手っ取り早い方法なのかもしれません。

雨のにおいもどこかに残ります。

こうまとめてみたらどうでしょうか。

【曲づくりに行き詰ったら~歌詞編~】

  1. 詩の舞台の天候を変えてみる!
  2. 嗅覚に訴える新しい小道具を使ってみる!

小説を書く時や、他の創作にも
応用できそうです。

「雨に願いを」の女性は一体だれ?

歌詞を見ると

私はひと足も動けないの

話をさせて 話をさせて

あゝもう一度

ふたりにさせて ふたりにさせて

雨・雨・雨 私たちを


「雨に願いを」

(歌:山口百恵、作詞: 千家和也、作曲: 佐瀬寿一、編曲: 船山基紀)

姿を見せない「あなた」は
どこに消えたのか?
一体なにがあったのか?
ミステリーです

今まで聴いてきた4曲と趣きがちがって
女性の感情が一番高ぶっています
切羽詰まっています

連続ドラマと感じるか
単体のドラマか
どちらの聴き方もできるでしょう

3曲目「嘆きのサブウェイ」
じっと心に不安を抱えこんでいた女性を
思い出しました

異質感あって
インパクトが強かったからでしょうか

5曲目「雨に願いを」
3曲目の彼女が
ついに行動にでたとみることもできる

3曲目の女性が夢で見たストーリー
それが「5曲目」かもしれないし

3曲目の女性の次の恋愛が
「5曲目」で描かれているのかも

いずれも「ドラマ」の続きとして
鑑賞した場合です

全く別々の女性ととらえるなら

群像劇みたいに
タイプの違った女性たちを百恵ちゃんが
演じ、歌い分けている点を楽しんで聴けばいい

「嘆きのサブウェイ」作詞は来生えつこさん
「雨に願いを」は作詞千家和也さん

「単体」世界であたりまえなのです

おもしろいのは
1枚の盤に場を占めたとき
連鎖しあうかのように
イマジネーションが広がること

様々な形でつながっていく

他の曲との関連づけから広がるストーリーも
あるかもしれません

各人が、聴き続けるうちに
自然とつながってくることを
楽しむのが一番だと思います

百恵ちゃんの「ヴォイス 力(ぢから)」!

『パールカラーにゆれて』のA面は、
1曲目「パールカラーにゆれて」から
5曲目「雨に願いを」まで

すべて編曲「船山基紀さん」です。

改めて聴いてみると5曲とも
リズミカル!
ドラムがはじけている!
打楽器全部ノリッノリ

いいなぁと思います

4曲目「君に涙のくちづけを」は
唯一しっとり落ち着いた曲ですが

リズムがはっきりしていて
聴きやすいと思います

「雨に願いを」もノリがいい

そんな中百恵ちゃんの歌は
やっぱりとても落ち着いて聴ける

「落ち着いている」とは
「遅い」という意味ではない

「動じない」とも表現できますが、
実際にはリズムに正確にノッて歌っている

「動じなさ」のまま「動いて」いる。

そんな禅問答を
あっさりクリアしている歌唱法
といえばいいでしょうか

なかなか伝えにくいところですが
どうも百恵ちゃんの歌には
そんなところがあるように感じます

その落ち着きに
「引きつけている感」
「支配している感」が醸し出されてくる

投げかけるヴォーカルの上に
「さあいらっしゃい」と
打楽器をのせてあげているように聞こえる

打楽器たちは「は~い」と
素直に従って「百恵ヴォーカル」の懐に
コロコロコロと
きれいに収まっていく

テンポ、音程あくまで正確
そしてこの主従関係!

不思議な「落ち着きヴォイス」
ここになにかすご~い秘密があるのなら
私も今から習得したいですが

声はその人特有のもの
声を裏付けるキャラクターも生来のもの

やっぱり真似できない
「山口百恵」の持ち味だと思います

友だちと一緒に笑った~子供の頃

1枚のアルバムを友だちと共に聴く

そこには、大きな思い出と
作品ごとの小さな思い出がいろいろあって
多彩です

「雨に願いを」という歌は
学校の休み時間に
友だちと二人でしゃべっている場面が
すぐに思い浮かびます

「雨・雨・雨」

この雨3連チャンのところ

いつもここを歌っては
一緒に顔を見合わせて笑っていました

理由は特にないんです

大人なら「え?どこが笑える?」って
理解できないかもしれません

これで「くすっ」と笑ってた
小学6年生って

とても「らしい」ですよね

今の子供にも共通すると思います

だれか気の合う人と
同じ歌を口ずさんで
見つめ合って笑う

あの一瞬

当時は全く思わなかったけど
人生の中でベスト5に入るくらいの
しあわせだったんじゃないかと思います

まとめ

  1. 「歌」とは別のパラレルワールドを感じよう
  2. 「歌」から連想する俳句なんかも知ってみよう
  3. 歌を印象的にするコツ「雨」や「嗅覚」を使おう
  4. 歌詞の女性は誰か?~連想、空想は自由にやろう
  5. 「動じず動いて動かす」山口百恵のヴォイスぢからを聴こう
  6. 子供がくすっと笑うところ?わかる人は若い

アルバム『パールカラーにゆれて』

 A面 

2曲目⇒ 「ある1ページ」

3曲目⇒ 「嘆きのサブウェイ」

4曲目⇒ 「君に涙のくちづけを」

5曲目⇒ この記事「雨に願いを」

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