山口百恵「嘆きのサブウェイ」

「アルバム」全体のストーリーを見つけてみよう

山口百恵「嘆きのサブウェイ」(作詞: きすぎえつこ、作曲・編曲: 船山基紀)

アルバム『パールカラーにゆれて』(1976年12月発売)のA面3曲目

レコードをかける
1曲終わって2曲めへ

歌が次の歌へ
バトンを継いでいく連携プレーが始まります

(A面)沈黙から
♪1番「パールカラーにゆれて」
きらびやかにスタートをきる

⇒2番「ある1ペ―ジ」
パール女子からバトンをもらい
全12曲へのロングラン青春宣言

⇒3番「嘆きのサブウェイ」
そう力まず自然体でくつろいで聴いてね
とつぶやく

こんな風に
「アルバム1枚通して聴こう」
と決意したなら、

作品たちはおのずと
連携プレーでストーリーを語りだす
そんな気がしませんか

私たちは「今度はどうしたのかな」
「ここで変化球ね。待ってたよ」等々

反応しながら
楽しむことができます

12色入りの色鉛筆に例えるなら
一つ一つの色を眺めるのもおもしろければ
並び順から醸し出される流れるようなトーンも
人それぞれの感じ方で鑑賞できたりするでしょう

この曲構成だからこそ
一層感動しているのかもしれない
、、、それはどうしてだろう

歌は一曲で完成形
一曲の中に広がる物語を聴く

これで間違いはない

コンセプトをもって統一感を持たせた
作りのアルバムには、

単体の詰め合わせ以上の何か
曲同士が関わり合って生み出されてしまう
世界が確かに浮かび上がってきます

1曲めと12曲めの違い

後半へいくほど成長しているような
錯覚(?)や

挫折からの立ち直りや

いろんなパターンがあるでしょうけれど
アルバム1枚分の時を共に過ごしましたねと

曲と人とが了解し合う
そんな素敵なラストが
待っているとも言えます

「嘆きのサブウェイ」にゆれて~不調和の調和

サブ様=「嘆きのサブウェイ」は
自然体でくつろいでねと
言ってました(私が言わせた)

じっと気合い入れて聴くには
12曲は長いからね、
そんなやさしさ

イントロは
楽しいサンバのリズムです。

「嘆き」なのに?
タイトルに反していておもしろい

打楽器のせわしない拍子と共に
どんどんノッて進みます

サブウェイとは地下鉄のこと
百恵ちゃんが歌うイメージは
日本の地下鉄でしょうか

ほどよい揺れ
踊りたくなる音楽ですが

百恵ちゃんの歌唱は沈んでいます
低めの声で
ずしんと浮かない気分を歌い続けます

楽しい気分だから
踊っちゃお!的な曲に「嘆き」とは

この落差をつなぎとめる
橋渡し役みたいに
「ドロンドロン」と
不穏な音を奏で続ける楽器があります

だから調和はとれています

モグラ(地下鉄)は
鉛色のボディでひたすら地下を進む

鬱うつとした心を
揺れにまかせて考えごとをしている女性

日常の気がかり、悩みを
うまくサブウェイに合わせている

2曲目の「ある1ページ」が
青春、回想、せつなさを
ストレートに歌っている曲でしたから

3曲目にこのような
不気味でおもしろい曲想がくると
飽きません

「今度はこうきた?」って
聴いちゃいますね

野球のバッターなら
「え?」と思った瞬間に
見逃している絶妙な変化球かな

「上等じゃん。次こい!」と
やる気がでてしまうんです

そして
「今の変化球あとでもう一度VTR見てやる」
と誓うことでしょう

百恵ちゃんらしさ

・低音 

低めの音が多めなこの曲では
百恵ちゃんの低音をいつも以上に堪能できます

単に低い音ということではなく
落ち着いている、動じない、
静かでひかえめ、大人っぽい

、、、といった
山口百恵のイメージにぴったり

百恵らしさ、良さがしっかりと表れているのを
見逃してはいけません

この時17才
やっぱり落ち着いた人でした

・声のゆれ 

地下鉄の振動にまかせて

揺れる心 淋しいわ

「嘆きのサブウェイ」
(歌:山口百恵、作詞: きすぎえつこ、作曲・編曲: 船山基紀)

ゆれる地下鉄、ゆれる心
そして歌い方も
語尾がゆれています

短調のメロディーの中に
1つ歌いにくい音がある気がしますが
(意識しすぎると音を上げすぎて外す例の箇所)

当然ながら百恵ちゃんは
「的確に」「心地よく」歌っています

この手のジャンルの歌は
いつも以上に正確なピッチ(音の高さ)に
支えられていないと成り立たないのかもしれませんね

ただでさえ閉塞感に満ちて
モヤモヤしながら揺れているのに

不安定なピッチで
歌まで揺らされたら
完全に乗り物酔いしちゃいますから

「嘆きのサブウェイ」の思い出~小6の私が憧れたもの

この歌の私個人の思い出です。

・友だちのこと 

私が百恵アルバムに目覚めたのは、
アルバム『パールカラーにゆれて』
からなんですが

一緒に聴いた友だちと
こんな会話をしました
(小学6年生の女の子二人の会話です)

友だち「どの曲が好き?」
わたし「「ある1ページ」が好きかなぁ」
友だち「わたしは「嘆きのサブウェイ」好きだな」

聞いた瞬間、
意外な曲。渋い!
と思いました。

彼女は他の子とくらべて
大人っぽく静かな人
独特な雰囲気があって

話していると
すごく落ちつける人でした

話す時はゆっくり低めの声
決して張り上げたりしません

そう「嘆きのサブウェイ」は
とても彼女らしいチョイス

憧れますねこういう女性
私にとっては、
百恵ちゃん、、、そしてこの友人

どこか類似点があってつながっているのかもしれません

・地下鉄通学 

「嘆きのサブウェイ」を知ってから
地下鉄で学校に通うのに憧れました

小学6年12月。
もう公立中学へ進むと
予定していましたから
すぐに夢は叶うはずがありません

中3で高校受験するときは
公立私立とも願書を出しました

一応第一志望は都立ですが、
もし私立になったら

通学定期持って毎日地下鉄に乗る
そしたら「嘆きのサブウェイ」の
主人公になりきって
電車に揺られてみよう

と憧れました

結果は公立高校に進んだため
地下鉄には乗れず

いつしか大人に近づき、
地下鉄に乗ること自体が
日常の単なる移動手段と化し

人の多さにうんざりして
それどころではなくなっていきました

それでも用事があって
地下鉄に乗ると
かなりの確率で
自然と「嘆きのサブウェイ」を心で歌っています

「アルバム」を繰り返し聴く人への特典とは

何度か「アルバム」を聴いて
歌も覚えるくらいになってくると
こんな現象ありませんか。

例えば「嘆きのサブウェイ」の
後半サビくらいを聴いていると

チラっ

チラっ

と心をかすめるものがある

次の曲です

この場合は、
4番手「君に涙のくちづけを」

その「君なみ」さんが
もうバトンをもらおうと
ライン上でスタンバイしているのが
見えてきます

薄紫色のウェアを
着ているようです(聴き手のイメージ)

チラっとイントロを
脳内で先取りする

そうだ。
次は「君なみ」さんだ!

その歌のイメージが来る

気に入り方の度合いによって
いろいろあるでしょう

この上なく愛する曲だと
ドキッと胸がはずんだり

「一瞬の予感」のせいだと思います
一瞬の中に歌の原風景、味、究極のカラーを
煮詰めたようなものを感じてしまう

「次これくるぞ」と
待ちの姿勢になるその瞬間

無意識も混ぜこぜになって
吹き上がってくるのでしょう

「私ってこんな風景を
この歌に感じてたのか、、、」と
知らされるということがある

「アルバム」でなければだめなのか
はわかりませんが、、、。

1つの歌を予感というイメージで把握すること

それもわざと仕組んだのではなく
(なぜなら「次曲のイメージ」が
いつ来るのか聴き手自身も
知ることはできないから)

現在聴いている歌の
「どこかの狭間」に突如一瞬来てしまう
イメージを察知すること

この特異なアングルに立てるのは
「アルバム」を順序良く聴いている時です

「次になにが来るかわからない」
つまり曲順をシャッフルした場合は
また新たな発見がたくさんあるんですよね

「次がわかっているけど
無意識の先取り演奏が聴ける」
という今回のパターンと
比べてみるとまたおもしろいと思います

まとめ

  1. 「アルバム」曲順に聴いて連携プレーとストーリーを楽しもう
  2. ダンサブルな「嘆きのサブウェイ」の不思議な調和
  3. 百恵ちゃんの「どんなときも落ち着いた表現」を聴こう
  4. 私の思い出~クラスメイト、地下鉄通学の夢
  5. 次の曲が一瞬予感としてくる!というアルバム内の立ち位置がおもしろい

「アルバム」順なら次はこちら⇒♪ 「君に涙のくちづけを」

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